監督の“ひとり言”2018?
現在、「甲子園出場」を掛けて各地で熱戦が繰り広げられているが…
最近、甲子園での「史上最高の試合」と言われる【箕島 vs 星稜】の記事を読む機会があり、当時の記憶が鮮やかに甦ったので、この試合の概要を以下に紹介する。
■甲子園史上最高の試合
39年前の1979年(昭和54年)8月16日、
第61回全国高校野球選手権の三回戦において、春の覇者・箕島(和歌山)に好左腕・堅田を擁する星稜(石川)が挑んだ。
この時、13才(中学3年)だった“平山少年”は、この試合を“かぶりつきで”テレビ観戦していたのだが…
まさに「魂が震える」ほど感動したことを今でも鮮明に覚えている。
そして、この試合を“笑顔”で采配していた、箕島・尾藤監督と星稜・山下監督の二人の名監督がとても大好きになった。
【箕島・尾藤監督の名言】
選手達は明るさも粘り強さも持っていた。
それは、彼らが自分で考えてプレーができたから。
私はヒントを与えただけ。
あれせえこれせえと管理せず、突き放すやり方だったので、選手たちにそういう力がついたのでしょう。
【星稜・山下監督の名言】
心が変われば行動が変わる。
行動が変われば習慣が変わる。
習慣が変われば人格が変わる。
人格が変われば運命が変わる。
この「伝説の試合」の概要は下記のとおりである。
星稜 000 100 000 001 000 100 3
箕島 000 100 000 001 000 101/ 4
(星) : 堅田 – 川井(投球数 208球)
(箕) : 石井 – 嶋田(投球数 257球)
延長18回、3時間50分の熱戦。
時に『野球は筋書きのないドラマ』と言われることがあるが、この試合はそれ以上だった。
9回裏を終わって1:1の同点、延長戦に突入したのだが、ここから数々の伝説プレーが起こったのだ。
【伝説?】発熱での出場
12回表、一死1_2塁の場面で続く打者のセカンドゴロを箕島主将・上野山がまさかのトンネル?
この時、セカンドゴロをトンネルしてしまった箕島主将・上野山は、実は「おたふく風邪」にかかっており、40度の発熱を押しての出場だった。
本人の強い要望があったとはいえ、現代ではありえない采配だが…
監督・選手ともに“強い”「信念」と「信頼」があったのだろう。
そして、この“おたふく風邪”が他の誰にも感染しなかったことも奇跡だと言える。
【伝説?】まさかの同点HR
12回裏、表の守りに主将・上野山のエラーにより1点ビハインドとなった箕島の攻撃だったが…
星稜の好投手・堅田に簡単に二死ランナー無しに抑えられて、絶体絶命のピンチに陥っていた。
ここで迎えた打者は、1番捕手の嶋田。
この嶋田がネクストバッターズサークルから打席に向かいかけて、ふと踵を返してベンチに戻ってきた。
「監督、ホームランを打ってきます」
そして、2球目のカーブを強振すると、これがレフトオーバーの同点ホームランとなったのである。
起死回生の1発?
実は、1番に嶋田入った打順は、この夏に嶋田本人が尾藤監督に進言し、異例の捕手の1番打者が誕生したものであり、これがこの場面で生きたことも“奇跡”なのである。
【伝説?】まさかの○○○球
この試合は、18回裏に箕島がサヨナラ勝ちしたのだが、実はその前に箕島がサヨナラ勝ちする大いなるチャンスがあった。
それは、14回裏、先頭が安打で出塁し、送りバント成功、三盗で作った一死3塁の場面。
スクイズでも、犠牲フライでも、内野ゴロFcでも、ワイルドピッチでも…
何か一つでもあったらサヨナラ負けの場面で、星稜の三塁手・若狭が驚きのプレーを見せた。
隠し球?
『ウソだろ』
きっと多くの観客がそう呟いたに違いない。
(私は大声をあげた記憶がある)
そして、この“隠し球”を決めた三塁手・若狭は、実は…
延長12回表の星稜の攻撃で、箕島二塁手・上野山のエラーにより1点を勝ち越しし、なおも一死1_3塁の場面から仕掛けたスクイズを…
この三塁手・若狭が失敗し、追加点をあげられず、結果、その裏に同点とされていた。
だが、若狭はそのミスをこの“隠し球”の好プレーによりチームを救ったのである。
【伝説?】二度目の同点HR
16回表、星稜に1点を勝ち越しされて迎えた16回裏…
先頭は4番からの攻撃だっただけに大いに期待されたのだが、4番5番とも簡単に討ち取られて二死ランナー無しに…
続く6番・森川は、公式戦はもちろん練習試合でもホームランを打ったことがないバッターであり、12回裏の1番嶋田の再現…などとは誰も想像できなかったのだが…
4球目を思い切り強振すると、これが左中間スタンドへの同点ホームランとなった。
またも「ウソだろ?」と多くの者が叫んだに違いない。
でも、実はこの1球前に、森川は1塁側にファールフライを打ち上げ、星稜1塁手・加藤が落下点に入り、今まさに捕球する…直前に、スパイクがこの年から敷かれた人工芝の縁に引っ掛かって転倒してしまう。
99%試合終了…の場面からの同点ホームランだっただけに、その衝撃は本当に本当に本当に凄まじいものだった?
「全身に鳥肌が立った」ことは言うまでもない。
【伝説?】初の春夏連覇(公立高校)
延長18回、3時間50分、攻守ともに好プレーが続出したこの試合は、18回裏に星稜のエース・堅田が力尽き…
2四球による一死1_2塁から5番上野のタイムリーにより幕を閉じたのだが…
ほとんどの者が両チームとも勝者にしてやりたいと思ったことだろう。
この試合を観た全ての者の心を大きく揺さぶった、まさに「甲子園史上最高の試合」だったと思う。
そして、この試合に勝利した箕島は、次戦以降の試合も当然のように勝ち上がって…
「公立高校による初の春夏連覇」を達成した。
なお、現在のところ、公立高校が春夏連覇を達成したのは、箕島、ただ1校しかない。
P.S.
この試合には後日談も多くある。
例えば…
この両チームは、当時のメンバーにて、今も10年に一度、再試合を行っているのだが…
どの球場で試合をしたとしても、1塁のファールゾーンの一部にお手製の人工芝を置いているそうだ。
(^_^)
でも、私が大好きな後日談は…
このとてつもなく凄い試合を捌いた球審・永野は、試合後、力尽きた星稜エース・堅田にこの試合で使用したボールをそっと手渡して…
『この景色を覚えておきなさい』と告げたという。
その堅田は…
現在、公認審判員として、春夏の甲子園に立っている。
とても素敵な後日談であり、「野球は筋書きのないドラマ」である以上に…
「人生は筋書きのないドラマ」である…と、改めて思う。
(^_^)
By 平山